お父さん語ってほしい

お父さん 語ってほしい あなたの生まれた街を
あなたの父のことを あなたの生きた時代を

  クラブ活動で 人よりいつも半周おくれたことを
  弁当忘れ グランドのすみにうずくまっていたことを
  カンニングして 先生にこっぴどくしかられたことを
  はじめての万引き はじめてのタバコの味を

お父さん 語ってほしい はじめてのラブレターのこと
そして 母さんのこと はじめて会ったときのこと
今が どんなに 冷めた家庭でも……


お父さん お願いです 街の木を切らないでほしい
羽根休める 小鳥たちと ぼくのためにも

  いじめられても そうと いえないことを知ってほしい
  友はいても 悩みを うちあける人がいないことを
  一人ぽつんと へやにいる ぼくを 見つめてほしい
  布団の中で ぼんやり うずくまっているぼくを

お父さん 語ってほしい 二人で過ごした山小屋のこと
そして ぼくの未来を 父さん 教えてほしい
くじけた時の 勇気のありかを


お父さん 見つめてほしい こんなぼくをもう一度
お父さん 泣いてほしい 抱きしめてほしい

家を出たとき どんな気持ちだったか教えてほしい
大人になることがどんなことか教えてほしい
夜明け前の暗闇は どれほど深いのでしょう
小さい頃 抱き起こしてくれた あなたの腕よ

お父さん そして最後に
秘密を 教えてほしい
必ず 守るから
ぼくは 勇気をもって
扉のところにいるよ
お父さん